「私が正輝を裏切る訳ないじゃない!」


少し腹立たしい想いを抱えながら歩く。
いつもキミと2人で通っている道。
1人だと味気なくて。
やっぱり寂しい。


「あー……寂しいー……」


病院だから仕方がない。
頭ではそう思っているけれど心は納得が出来ないんだ。


「和葉ちゃん」

「え?」


振り向けばキミとよく似た人が立っていた。


「お、お兄さん!」

「よう!」


片手を上げながら正輝のお兄さんは私へと近付いてくる。
それを立ち止まったまま待っていれば満面な笑みを向けられた。


「今日は1人?
いつもは正輝といるのに、喧嘩でもした?」

「え……?
今日は病院の日だって……」


私が言えばお兄さんはハッとした様に目を丸めた。
まるで今初めて知ったかの様に。
お兄さんが1番、純粋に正輝の事を心配をしてくれている。
それは私もキミ自身も思っていた事だ。
そんなお兄さんが病院の日を知らないって事があるだろうか?
少し気になったけれどブンブンと頭を横に振った。
何を考えているのだろうか。


「そうだった、明日と勘違いしていたよ」


取ってつけた様な言葉。
そして違和感を漂わせる笑顔。
何かが引っ掛かって私は愛想笑いを浮かべる事しか出来なかった。


「そうなんですか」

「うん、一緒に帰ろうか。隣だし」

「……はい」


断るのもおかしいから頷いたけれど。
何か少し胸がざわつくんだ。