キミは言っていた通りに2時間目が終わったら早退をした。
正輝がいない教室は退屈だけど。
正輝がいない屋上の方が辛くて。
今日は授業をサボらずに全部の教科を真面目に受けたんだ。

6時間目が終わって席を立ちあがろうとしたらクラスメートに囲まれる。


「……なに?」

「お前さ……いい加減にしろよ!」

「いつまで一ノ瀬につくつもりだよ!」


男子たちが私を睨みつける様に立っている。
立つことも許されずに私は見上げる様に男子たちを見た。


「あの……帰りたいんだけど……」

「は?」

「いや、だから……」


聞こえなかったのだと思いもう1度言おうとすれば怒った様に怒鳴られる。


「聞こえてんだよ!」

「あ、そう」


どうすればいいか分からずに首を傾げる。


「和葉ちゃん!」


そんな私を助ける様に由香里ちゃんが話し掛けてくれるんだ。


「こっちについた方がいいよ!
和葉ちゃんだって一ノ瀬くんに同情してるだけでしょ?
知り合いだったみたいだし!」

「そうそう!
今なら皆だって許してくれるって!」


いつの間にか後ろにいた有紗ちゃんが私の肩をポンと叩き皆に視線を向けていた。
皆も笑顔で頷いていたけれど。
交じり合った視線から本当の声が聞こえてくる。


「(俺は一ノ瀬を苦しめればそれでいいし)」

「(白石まで巻き込みたくないな)」

「(一ノ瀬と白石が仲良くしてるのがムカつく!早くこっちにつけよ!)」

「(あの子、一ノ瀬くんと仲が良いからムカつくわ)」

「(一ノ瀬くんよりアイツを痛めつければいいのに)」


様々な声が入ってきて思わず笑ってしまった。
やっぱり、人間なんて、大嫌い。


「ごめん、私は……正輝と一緒にいたいから」


それだけ言って笑顔を浮かべた。
呆然とする皆を掻き分けながら教室の外に出た。