嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「お前らなー……いくらなんでもサボりすぎだぞ!?」


放課後の職員室で、自分の席に座りながら呆れた顔をする担任、佐藤先生。
その前で私と正輝は立っていた。

キミは何処か違う所を見ていて。
私は少し俯いていて。

お説教をされているというのに2人とも真面目に聞いていない様に見える。


「……」


そんな私たちを見て深くタメ息を吐く佐藤先生。
別に何とも思わないし、顔を上げる気もなかった。
だけどふいに視線を向けてしまったんだ。


「(コイツらは何を言っても無駄か。人間のクズだ)」

「……」


佐藤先生と目が合った瞬間に頭の中に声が響き渡った。
いつも聞く声とは全く違う低い声。
それを聞いても今は何とも思わない。
だってキミが、正輝が隣にいてくれるから。


「(まあ、学年1位と2位だから何とも言えないが。
これで頭が悪かったら本気でウザいけどな)」


まだまだ続く醜い声。
私しか知らない佐藤先生の裏の顔。
それに黙ったまま耐えるけど、これ以上聞いていたくなくて視線を逸らそうとする。
でも、それが出来なかった。


「(一ノ瀬に至ってはカンニング事件なんて引き起こすし。
嘘がつけない病気って迷惑すぎるな……うちのクラスの評判が落ちるじゃねぇか)」


私の事や他のどんな事でもきっと耐えられた。
でも、正輝の事を、それも嘘がつけない事を悪く言うなんて許せなかった。
何度も我慢をしようと思ったけれど耐えきれずに小さな声が漏れていく。


「……か……?」

「何だ白石?」

「クラスの評判がそんなに大事ですか……?」

「……は?」


驚く佐藤先生を無視して彼を睨みつける。
でも、きっと。
私の顔は哀しみに染まっていたに違いない。


「正しい事をした人の事を何で迷惑だって邪険にするんですか……?
そんなに人と違う事がいけない事なんですか?」


力なく出た言葉。
佐藤先生は相変わらず驚いていたけれど。
キミはいち早く察した様に私の肩を支えた。