グッと苦しくなる胸。


『化け物』

誰かにそう思われそうで、怖くて仕方がない。
実際には言われた事はない。
私が必死に隠しているから。

なるべく目を合わせない様に、なるべく人と関わらない様に。
でも波風を立てるのは面倒だから浮かない程度に。

ずっとそうやって生きてきた。

だけど。


「っ……!!」


人の“心の声”、本音を聞くなんて怖い。
知らなくていい事をわざわざ知りたくもない。
それがいい事だとしても、悪いことだとしても、だ。

ガクガクと震える体。

朝になったらもう聞こえなくなっています様に。
悪い夢だったかの様に消えています様に。

布団を被り祈るように手を重ねながら体を小さくする。
固く目を瞑り真っ暗な世界に自分を落とす。

頭に、目に浮かぶのは今日出逢ったあの男の子の事。

彼は口から出る言葉も、心の声も。
そんなに違いはなくて。

表も裏もなかった。

あんな人に出逢った事がなくて。
驚いたけれど、凄く嬉しかった。

汚れた世界、偽りだらけの世界。
そんな醜い世界に現れたキミはとても輝いて見えた。

名前も知らないけれど。
今無性にキミに会いたい。
あの綺麗な瞳で私を映して。

一緒にいた時間は短いから、まだ本当のキミの姿は分からないけれど。
どうか、そのままの綺麗なキミでいて。