ご飯を食べ終わり、お風呂も済ませ、後は寝るだけの状態になった。
明日は学校だし早く寝ないとな。
そう思い自分の部屋のベッドに潜り込んだが頭が冴えて寝れなかった。

ゴロンと何度か寝返りを打つが一向に眠気はやってこない。
その代わりに私に襲いかかってくるのは胸の痛みだった。
別に病気なんかではない、健康そのものだもの。
でも、私は普通の人とは違う。

聞こえてはいけない声が私には聞こえてしまうんだ。


人の奥底に眠っている“心の声”が私の頭の中に勝手に聞こえてくる。
目が合うだけ、それだけで。
聞きたくもない声が入ってくるんだ。

それは私にとっては当たり前で。
たぶん、物心がつく前から、産まれた時から、私の中には誰かの声が入ってきた。

小さな頃はそれが普通だと思い込んでいた。
でも、年を重ねるうちに人とは違う、そう気が付いたんだ。

そんな事を周りに知られたら気持ち悪がられる。
そう思った私は誰にも言わず、自分の胸の中にこの事を隠し続けてきた。

でも、お兄ちゃんだけは、私の異変に気が付いたんだ。
この世でたった1人、両親でさえ知らない私の秘密を、お兄ちゃんだけが知っている。

両親は共働きで、子供の頃から2人で一緒にいる事が多かった。

遊ぶのも、勉強をするのも。
何をするにもずっと一緒だった。

特に小学生になってからは。
自分が普通ではないと理解をした時から。
私は誰かと関わるのが少し怖くなっていたんだ。
自分の意思と関係なく入ってくる声もその人の裏の顔も。
何もかもが怖くて逃げ出す様にお兄ちゃんにすがった。

お兄ちゃんは優しいから私の傍にずっといてくれたんだ。
友達よりも私を優先して。
今もこうして家にいて私を支えてくれている。

このままじゃ駄目だと思っているけれど。
お兄ちゃんが居なくなったら、きっと私は。
壊れてしまうだろう。