「どうしたんだ?(何だ今の、心で思っている事が聞こえたみたいに……)」

「あ、いや……。美味しいご飯を作って貰ってるんだから『いただきます』は言わないと」

「ああ、そうだったな。(気のせいか)」


お父さんの声が聞こえなくなったのを感じ、私はホッと胸を撫で下ろした。
危なかった。
そう心で呟くと黙って箸を動かした。


「……」


コツンと軽く足を蹴られた私は隣に視線を移した。


「(大丈夫か?)」

「……」


口は動いていないのに聞こえるお兄ちゃんの声。
それに応える様にコクンと首を縦に振る。
すぐに目を逸らしてご飯を食べ続ける。
一刻も早くこの場から去りたくて。
1人になりたくて。


「そう言えば今日お隣さんに人が入ってきたみたいよ。
……あの新築のクリーム色の可愛らしい家」


お母さんはそう言うとカーテンの閉まった窓を見つめた。


「へえ、あの家に人がね」


お兄ちゃんも同じ様に窓の方を見るがお父さんは構わずにご飯を食べ続けていた。


「……」


その光景をどこか他人事の様に見ながら心で小さくタメ息を吐く。