嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「皆そうだ……母さんだって父さんだって……。
いつだって俺を可哀想な目で見るんだっ……」


キミの悲痛の表情が私の胸を抉っていく。
そんなキミに声を掛ける事も出来なくてただ力いっぱいに抱きしめた。


「事故は父さんが運転していた車で家族4人で乗っている時に起きたんだ。
左から飲酒運転の車が突っ込んで来て助手席の後ろに乗っていた俺だけが意識不明の状態になった。
皆はかすり傷で済んだみたいだけどね」

家族4人で乗っていて。
キミだけが生死を彷徨う状態になった。
それは家族にとってどれだけ辛い事だったのだろうか。
いや、辛いなんて言葉では表せられないほどだろう。


「……父さんは腫れものに触る様に俺に接して。
母さんはいつも俺の機嫌を気にする様に見てて。
弁当だって、食事にだって俺の好きなモノだけを作る様にしてて。
一緒にいて凄く苦しいんだ……。
そんな中で兄貴だけが普通に俺に接してくれて助けられたんだ」


お兄さんの事を話すキミは本当に幸せそうだった。
でも少し寂しそうに見えるのは気のせいかな?
分からないけど、何かそんな気がするんだ。


「正輝……」

「同情なんかしないで。
アンタまでそんな目で俺を見ないでっ……」


震えるキミの体。
ぎゅっと私の腕を掴むキミ。

苦しさでもがいているのが分かり切っていて。
私まで苦しくなってくる。


「同情なんかしない」

「え……」

「私だって同情なんかされたくないもん。
だから……しない、絶対に……」

「……ん……」

「ただ……」


私が口を閉じればキミは不思議そうに首を傾げていた。