嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「どうしたの?いきなり」

「どうしたのじゃないよ……。
何でヘラヘラしてるのよ!
いきなりそんな後遺症が残って平気な訳ないじゃん!!
なのに……何で……そんなに笑っていられるの……」


ポタリと涙が流れた。
もう、どれだけ泣いたら気が済むんだ。
そう思うほど泣いている気がする。
でも、止める事も出来なくて正輝の腕を掴み泣き続けた。


「別に辛くもなんともないんだ」

「そんなの嘘……っ……」


『嘘でしょ』

その言葉を呑みこんだ。
だってキミは嘘がつけないのだから。
あまりにもデリカシーがない言葉を放ってしまった事を悔やんでいればキミは気にも留めていないように優しく微笑んだ。


「俺さ……事故が起きる前は嘘つきだったんだ」

「え……」

「んー。例えば今目の前でカツアゲが行われているとする」

「……」

「くだらない、やめろよ。
そう思っても面倒臭いが勝って何もしようとしなかった」


多分、大半の人がそうするだろう。
他人よりも自分の身の方が可愛いもん。


「だけど、心の中ではやっぱり違うって思ってて、でも行動には移さなくて。
色んな気持ちが巡り回って……よく分からなくなってた。
でも、嘘がつけなくなってからは気持ちがすっきりしたんだ。
だって、迷う事無く行動が出来るから。
俺だって死にたくないし、そうするには自分に正直にならないといけない。
だから……俺は事故に合って、嘘がつけなくなって良かったって思うんだ」

キミはそう言って笑う。
屈託のない綺麗な笑顔で。
どんな時だって真っ直ぐだったキミ。
その背景には、こんなにも重たい事が隠れていたなんて考えてもいなかった。


「……辛かったね……」


自然に出た言葉。
それを言った瞬間にキミの顔から笑顔が消えた。


「同情なんかするなよ!」


キミの怒鳴り声を初めて聞いた気がする。
大袈裟なほど肩を上下に動かしながら息をするキミ。
怒り慣れていないんだなってすぐに分かった。