「正輝……」

「和葉……丁度良かった」


驚いた顔をするキミ。
でもすぐに笑顔に変わった。


「今チャイムを鳴らそうとしていたんだ。
……手間が省けた」


にっと笑うキミは何も変わっていなかった。
少し会っていなかっただけだから変わっていないのは当然なのに。
凄く嬉しかった。


「よかった……」


今まで悩んでいた事なんて。
キミの顔を見たら一気に消えていった。
私の顔には作った物なんかじゃない、本物の笑顔が浮かんでいた。


「……時間……ある?」

「……うん」


だってキミに会いに出たんだから。
いくらだってある。
それは言わなかったけれど小さく頷いた。

鍵を閉めてキミの元へと真っ直ぐに歩き出す。


「ん」


門を開けて、キミの隣に立てば当たり前の様に差し出される手。


「ん」


私もキミの真似をして短く返事をする。
手のひらをキミの手のひらに重ねれば優しく握られる。


「行くよ」

「……うん」


何処に行くとか、何をするとか。
そんな事もどうだって良かった。
だってキミと一緒にいる事だけで私は幸せなんだから。

何処へだってキミと一緒なら大丈夫。
私の壊れてしまった心を、刻まれた心を。
ひとつずつ集めてくっつけてくれる。
元通りとはいかないけれど。
キミが隣にいるだけで強くなれる気になるんだ。