嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「服、乾いたみたいだね」

「あ、本当だ」


彼の声に視線を向ければ、すっかりと乾いた服が目に映った。
今日が快晴でよかった。
空を仰げば眩しさに目が細まっていく。


「じゃあ、帰るから」

「ありがとう、付き合ってくれて」


ズボンについた砂を払いながら彼は立ち上がった。
それにつられて私も同じ行動をとる。
一通り綺麗になれば彼は私に背を向けた。


「またね、和葉」


“また”があるかなんて分からないのに自然にそう言う彼。
だから私も頬を緩めてキミの背中に声を掛けた。


「またね」


名前は知らないから呼べないけれど。
いつか、キミの名前を呼ぶ日が来るといいな。

心で呟いて、キラキラと光る海を眺めた。

今日はいい日だった。
本当に。

ほんわりと温かくなる胸をそっと手で押さえながら振り返る。

そこには小さくなった彼の背中が見えた。
自然と笑みを浮かべながらポツリと言葉を落とす。


「……またね」


何だろうこの気持ち。
本当にまた会える様な、そんな感じがした。