風便り〜大切なあなたへ〜






「・・ここのホテル、覚えてるか?」


「うん」



大和は少し声のトーンを低くして、話し出した。

心なしか、ちょっと苦しそうな声に聞こえた・・。



「前に来た時、俺、少し前まで、よく来てたって言ってたのも、覚えてるか?顔覚えられてたかもって」


「うん」



ちゃんと覚えてるよ。

大和とこのとは、全部覚えてる。

大切な思い出だから、いつも、一瞬一瞬を大切に胸に刻んで、大事にしてるよ・・。



「その・・よく来てたっていうのが・・」



大和はそこまで言うと、言いにくそうに話すのをやめた。

私はなんとなく、その続きが想像できた。


きっと、香月さんと来てたんだね・・。



「・・香月さんと、来てたの?」



私の言葉に、大和の体が小さく震えたのが、背中から伝わってきた。



「・・・」



何も言わなくても分かるよ・・。

やっぱり、そうなんだね・・。



「・・・それだけじゃ、ねえんだ」


「え?」


「あいつだけじゃ、ねえんだよ・・」


「・・・」



それって・・。

どういうこと・・?

香月さんだけじゃなくて、他の人とも、来てたってこと・・?



「俺、お前に会う前は、荒れてたってのは、言っただろ?」


「うん・・」


「その時、俺、誰とでもいいから・・」


「・・・」


「・・・やりまくってたんだよ」



大和は、辛そうに声を絞り出して言った。



「俺、自分で言うのもなんだけど・・こんな見た目だから、女の方から寄って来たし、誰でもいいから、手頃な女捕まえて、毎日、違うやつと・・・」


「・・・」



やだ・・。

そんな話・・。


私は胸が苦しくなって、ぎゅっと目を閉じた。



「やりまくって、捨てて、泣かして、傷つけてた・・」



やめてっ・・。

聞きたくないっ・・。


私の目からは、いつの間にか、大粒の涙が、溢れ出ていた。

胸が苦しくて、息も上手く出来なかった・・。