玄関で大和と別れて、一人、部屋で雑誌を見ながら、ゆっくりしていると、携帯が鳴った。
私は携帯を手に取って、表示されている名前を見た。
そこには、『結城』とだけ書かれていた。
「え・・・」
結城って・・。
あの・・結城さん・・?
私の友達に、結城って名前の人はいないし、あの時、結城さんは、俺の番号を登録したって言っていた・・。
だけど、あれから、一度もかかってきたことは無かったし、携帯に結城さんの番号が入っていることすら、私はすっかり忘れていた・・。
私は緊張しながら、震える手で、通話ボタンを押した。
『・・・もーー・・』
『遅えよ』
結城さんは、私の言葉を遮って言った。
『・・・』
『また黙りかよ。お前、変わってねえな』
そう言って結城さんは、電話の向こうで笑った。
『久しぶりだな』
『・・・』
『元気だったか?』
『・・・』
私はあの時のことが、フラッシュバックして、怖くて声が出なかった・・。
『何か言えよ。俺一人で喋っててバカみてーじゃねえか』
『・・ぁ・・』
やっと出た声は、小さく掠れて、言葉にならなかった・・。
電話の向こうから、小さなため息が聞こえてきた。
『まあいい。一つ、警告だけしといてやる』
『・・・』
・・・警告?
『香月さんに、お前のこと、バレた』
『え・・・?』
『かなり時間もたったし、守屋の事、諦めてると思ってたけど、そうでもねえみてーだし、一応頭に入れとけよ』
『・・・』
わざわざ、それを言うために、電話してくれたの・・?
『じゃあな』
『ぁ・・あり・・が、とう・・』
私は慌ててお礼を言った。
声がちゃんと出てなかったけど、一応言葉にはなった・・。
『・・なんだ、ちゃんと喋れるじゃねえか。マジで俺、嫌われたかと思った』
電話の向こうから、また結城さんの笑い声が聞こえてきた。
『・・・』
『それと、俺・・・お前のこと、本気だった』
『え?』
『じゃあな』
そう言うと、結城さんは電話を切った。

