私は、家に入ると、お母さんのいるリビングに、大和を通した。
「お母さん」
私の声に反応して、お母さんは振り返ると、少しびっくりしたように大和を見た。
「まあ、守屋くん?帰ったんじゃなかったの?」
「うん・・お母さんに、お願いがあって・・」
そう言うと、私は握っていた大和の手を、ぎゅっと握り直した。
「お願い?」
「うん・・」
「・・何かしら?」
そう言うとお母さんは、首を小さく傾げた。
「お母さん・・今日、大和の家に泊まってもいい?」
「え?」
私の問いかけに、お母さんはびっくりした顔をしていた。
「あの・・俺の家、親は滅多に帰ってこねえから、家には誰もいねえし、真子と離れるのは寂しいです・・変なことはしません。お願いします」
そう言って、大和はお母さんに頭を下げた。
私も一緒に、お母さんに頭を下げた。
「お母さん、お願い・・」
お母さんは、大きく息をはいた。
「・・・二人とも、頭を上げなさい」
お母さんの声は、少しピリッとしたような声だった。
私と大和は頭を上げて、お母さんを見た。
「・・守屋くん。その言葉に、嘘は無いわね?」
「・・はい」
「・・・いいわ。ただし、本当に真子には何もしないこと。高校生らしく、健全で誠実な関係でね?」
「・・はい」
大和が返事をすると、お母さんは頬を緩めた。
「私は、守屋くんを、信じてるわよ?」
「・・はい」
それからお泊まりの準備をして、大和と二人、家を出た。
暗い夜道に、街灯だけが頼りの道。
虫の鳴き声が、少し不気味に聞こえた・・。
暗闇に薄っすら浮かび上がる、大和の横顔を見つめていたら、大和が私に視線を向けた。
「・・たぶん、俺、お前の母ちゃんに、見透かされてた」
「え?」
「変なことしねえって言ったけど、やっぱり、多少は下心もあったんだよ。ちょっとくれえなら・・って」
「・・・」
そう、だったの・・?
私は完全に、大和を信じていたのに・・。
「でも、あそこまで言われたら、何もできねえよな」
そう言って大和は小さく笑った。
・・お母さんって、すごいな・・。
大和に、ここまで言わせちゃうんだもん・・。
ちょっと妬けちゃうよ・・。

