風便り〜大切なあなたへ〜






いつもは騒がしい結依も、祐太も、何も喋らなかった。

ただ、静かな空間に、お父さんと、大和の声だけが響いていた。



「付き合うだけならいいが、結婚となると話は別だ」


「・・・」


「守屋くん、きみ、いくつ?」


「・・17です」


「真子より一つ年上か」


「学年は同じです」


「・・・留年したのか?」


「はい」



大和の返事を聞いて、お父さんは小さくため息を漏らした。

大和はお父さんの顔から、目を逸らさずに、しっかりお父さんを見据えていた。



「どうして、留年したんだ?」


「・・・部活で怪我して、そのまま荒れだして、学校に行かなくなったので、日数が足りなくて、留年しました」


「じゃあ今も、学校には行ってないのか?」


「今は、行ってます。最初の数日は行ってませんでしが、真子と出逢って、行くようになりました。俺はあの時、真子に出逢ってなかったら、今も変わらず、学校にも行かず、最低な人間のままだったと思います」


「それは、どういう意味だ?」



お父さんは眉を顰めて、大和を見た。

大和は一呼吸置いてから、話し出した。



「・・・あの頃の俺は、すげえ荒れてて、毎日喧嘩してました。ボコボコにやられた時、組の人に助けてもらって、ちょっとの間、その組織に出入りしてました。もう自分がわからなくなっていた時に、真子に出逢って、俺は、真子の言葉に救われたんです」



そこまで言うと、大和は私の手をぎゅっと握り直した。

私は大和を見上げた。

大和は、私を優しく見てくれていた。



「真子の存在が、今の俺を作ってくれました」


「大和・・」



私が大和の名前を呼ぶと、大和は優しく微笑んでくれた。

その後すぐに、真剣な顔になって、お父さんに視線を移した。



「だから、もう真子がいないと、俺は生きていけません。片時も離れたくありません。真子以外、他の誰も愛せません。真子だけが、俺の全てです」



「・・・決意は堅いようだな?」


「はい」



お父さんは、大和の返事を聞いて、大きなため息を漏らした。



「・・いいだろう、結婚は許す。だけど、せめて結婚は、高校を卒業してからにしなさい」


「・・・無理です」


「なに・・?」



お父さんは、大和の言葉に、目を見開いた。



「無理です。そんなに待てません。今すぐにでも、一緒になりてえのに、卒業までだなんて、とてもじゃねえけど、待てません」


「守屋くん、きみ、なにを言ってるのか分かっているのか?」


「はい、断られるなら、駆け落ちでもなんでもしてやる覚悟です」


「・・・」



お父さんは口をポカーンとしばらく開けたあと、わなわなして、拳を握りしめた。