「待てよ!逃げんなよ!」
「はあ?誰が逃げるかよ」
結城さんは振り返って、戻ってくると、真子の前髪を掴んで、顔を無理やり上に向かせた。
「・・っ」
「真子に・・触んなっ!」
「うるせえな、お前は黙ってろ」
くそっ、こんなんじゃなかったらあいつを殴ってやるのに、体が動かねえ・・。
俺は、二人を見ることしかできなかった・・。
「おい、約束だ。お前の存在、香月さんには黙っててやるよ」
「・・え?」
「俺は、約束は守る主義だからな。もうお前らにも飽きたし、好きにしろ」
「・・・」
「また黙りかよ」
そう言って結城さんは笑うと、手を振って、屋上から出ていった。
「・・・真子」
俺は真子を真っ直ぐ見つめた。
目の前で、こんな格好にされて、俺は黙っていられるわけがなかった。
「・・・」
「何やってんだよ!バカかお前は!」
ようやく体も動けるようになり、俺は強く真子を抱きしめた。
真子の体は震えていた。
「守屋くん・・ごめっ・・」
俺は真子の頭に手を回し、優しく抱きしめた。
「お前が無防備なのは、俺にだけなんだろ?なんだよこの格好・・」
「・・っ・・」
「心配させんなよ・・」
「・・・っ」
「真子・・・ごめん、俺が間違ってた。もうお前を手放したりしねえ」
「・・う、ん・・守屋くんっ・・」
「真子・・・痛むか?」
俺は真子の頭から手を退け、真子の顔を覗き込んで、優しく頬に触れた。
こんなに腫れちまって・・可愛い顔が台無しじゃねえかよ。
可愛いのは、顔だけじゃねえけどよ・・。
「・・・大丈夫、だよ?」
そう言って真子は、泣きながら笑顔を作った。
「嘘つけ、我慢するなよ」
「・・っ・・」
「ちゃんと言えよ」
「・・っ・・い・・痛、い・・よ・・」
やっぱりな・・。
くそっ、あいつ、覚えてろよ。
次会った時は、今度こそ許さねえからな。

