風便り〜大切なあなたへ〜






守屋くんは、何も言わなかった。

私も、何も喋らなかった。

周りの雑音と、私の心臓の音だけが大きく耳に響いていた。

目的の駅に着くと、守屋くんは私の腕を掴んで、人混みをわけて電車から降りた。



「すごい人だったね・・」


「そうだな・・お前、大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ」



私は笑顔で守屋くんを見た。


守屋くん、心配してくれてるんだね。

ありがとう・・。



駅から出ると、水族館まで歩いた。

水族館までは30分かかったけど、大好きな守屋くんとずっと手が繋げて嬉しかった。

守屋くんの手は、あいかわらず大きくて、ゴツゴツした、あたたかい手だった。



「大和の手、いつも温かくて、私好きだよ」



私はちょっと恥ずかしかったけど、素直な気持ちを、微笑みながら守屋くんに伝えた。



「お前の手は、いつも冷てえな」


「え・・」



思ってもみなかった言葉が、守屋くんから返ってきた。

私は今まで、手が冷たいなんて人に言われたことがなかったから、自分の手が冷たいなんて思わなかった・・。



「だから、俺がお前の手、温めてやるよ」



そう言って守屋くんは、私の手をぎゅっと握ってくれた。



「うん・・ありがとう」



嬉しくて、私も守屋くんの手をぎゅっと握り返した。


私はちらっと守屋くんを見上げた。

いつも見ている守屋くんの横顔が、いつもよりかっこよく見えた。

今更だけど、守屋くんの顔ってすごく整ってる・・。

私って、面食いだったのかな・・。



「そんなに見つめんなよ、照れんだろ」


「・・・うん、ごめん」



守屋くんは言いながら、あいている方の手で、私の前髪をクシャクシャと撫でてくれた。

私は、守屋くんに触られた前髪を少し直して、小さく胸が鳴っているのを感じた。



「謝んなよ・・照れるけど、嬉しいんだからな」


「うん・・」



守屋くんを見ると、耳まで赤く染まっていた。

そんな守屋くんを見て、私も恥ずかしくなって俯いた。