②琳夏side

琳夏が家に帰る

また明日、今日頑張ってね、と言うアリスと別れ、家の前の十字路へ歩き出す。
怖いな。怖いな。
新しいお母さんは寿美子さんという美人。元ヤンという素晴らしい経歴の持ち主だが、そこは必死に目をつぶってる。
優しくて、綺麗な寿美子さんは、料理も上手だという。今日はじめてあうわけではない。一ヶ月ほど前から3回あっていた。
でも、緊張する。他人、だから。
がちゃんと音がして、私の家のドアが開いたのが見えた。誰?あ、寿美子さん?たたたっと駆け寄ると、やはり寿美子さんだった。
「あ、琳夏ちゃん、おかえり。」
「あ、た、ただいま...です」
くすんと笑った寿美子さんは買い物に出かけていった。
素直にタメで話せない自分に少しがっかりしてしまう。
ドアを開けると、家の中はしんとしていた。そりゃそうだ、お父さんは仕事で寿美子さんは買い物なんだもの。ぐるりと部屋を見回す。息を吸い込む。どこか新鮮だけど、なんだか違和感。
溜め込んでいたスナックを手に、自分の部屋のある二階へ上がると、再びなんとも言えない違和感に駆り立てられた。ま、いっか。少し廊下を進み、私の部屋のドアノブに手をかけ──
カタン。
えっ、何。向こうの突き当たりの部屋から音がした。え、どういうこと?
近づいてみる。
カタン。
ほらっ、また...
何故か反射的にドアを思い切り開けてしまった。