琳夏、きゅんきゅん

先輩の隣を歩いて学校まで到達した私は、ムフフな気分で先輩に別れを告げ、礼を言った。
「先輩、ありがとーございました♡」
「俺こそありがとう。琳夏」
琳...夏!?
「俺のこと、なんて呼んでくれるの?」
完璧の笑顔。私、今、夢見てるのかな?
ほっぺをつねろうと手をあげたその時。
その手に、先輩の手が重なった。
「夢じゃないよ」
「先輩...!」
夢じゃないなんて事は有り得ない!
───有り得ないよ!
でも、何で先輩は私をかまってくれているの?素直な疑問が心の中に突如浮上した。
「琳夏って、黒目大きいんだなあ」
先輩が私をのぞき込む。
浮上した疑問は、渦を巻き始めて、心の中にじっととどまって離れない。
「先輩」
「ん?」
「どうして、私をかまってくれてるんですか?」
聞かずにはいられなかった。
「どうしてだろうね」
優しくて裏表のない先輩の微笑み。
少し安心する。
「琳夏の事を好きだから、って言ったら、どうする?」
「そんな、先輩、彼女いるのに──」
「いないよ」
即答する先輩。嘘...いるはずなのに。
こんなカッコよくて性格良くてモテモテな先輩、女の子がほっとくわけないじゃん...
「ホントだよ。琳夏のこと、」
先輩は、私の耳に口を寄せて、
「好き」
言わ...言われちゃった...好きって...。
これって、告白?告白だよね?
「俺さ、琳夏のオトコになりたい」
オトコ?オトコってゆーのは...
「カッ!!!!カレシですかっ!!!!」
「そう、だけど、ダメかな?」
再び顔をのぞき込んでくる先輩...。
どうしよう。初めてだよ、付き合うのって...でも、本当の本当に好きな人に告白されちゃうのはこれが初めて。──最初で、最後かも、知れない?
改めて先輩の顔をじっと見る。
───カッコイイ。
裏表があるようには見えないし、優しそうな微笑みはなんだかあったかくて...。
胸がトクンと1回鳴った。
「琳夏?」
トクントクントクン...鳴り止まない。
「おっ」
「え?」
「おっ、お...」
「え?」
「お願い致しますっ!」
言った。言ってしまった。
にこりとほころぶ先輩の顔。
「ありがとう」
そして先輩は、慣れた手つきで私の肩の上に腕を回し、ぎゅっと抱きしめてくれた。
先輩──。
でも、こんなに展開早くていいのかな?