「瑠美ちゃん、朝よ」
あたしはその声にゆっくり目を開ける。
普通なら、ここで起こしてくれるのは、お母さんなのかもしれない。
でも、あたしを起こしてくれたのは、白い白衣を着た看護師さん。
あたしにとっては、これが普通。
だって・・・。
「・・・おはようございます」
「おはよう。今日の調子はどう?」
「大丈夫です」
「そう。ならよかったわ。でも、無理はしないようにね」
あたしは、生まれつき心臓病だから。
あたしの家は、この病院なんだ。


「いってきます」
特別に許可をもらった高校に向かう。
「瑠美、おはよう!」
「あ。おはよー」
この子は、小学生の頃からの親友、木下里樹。
あたしのことを誰よりもわかってくれてる。
だから、里樹は絶対に騒いだりしない。
あたしが、騒ぐことが大嫌いなのを知ってるから。

教室に着いて、窓側の一番後ろの席に座る。
ここはあたしの特等席。
だって、一番静かなんだもん。
でも・・・。
「瑠美、あいつ来たよ」
里樹の言葉に隣の席に目を向ける。
そこには、この学校で超のつく程に有名な男の子がいた。
彼の名前は、白川瑆、君」
すごく女の子たちにモテる・・・らしい。
そして彼は、里樹ととても仲がいいんだ。
「おはよ、白川」
「おー。はよ」
「あんたさ、また女子たちに囲まれてたの?」
「んー。あいつらがついてくんだよ」
「ふーん。まあいいけどさ、できるだけうるさくなんないようにしてよ。瑠美が困るんだからね」
チラッとあたしを見る白川君。
「ごめんなさい・・・」
「べつに。謝る必要ねぇじゃん?俺の方こそ、その・・・うるさくて、悪かった。高坂」
「ううん。白川君は全然・・・!」
「でも・・・」
「へぇ〜。あんたって意外と素直なんだね」
白川君は、里樹の言葉に目を細めた。
「うるせぇよ、木下」
「ふふっ。褒めてるんだけどな〜」
あたしはふと気になったことを訊いた。
「あの、さ。里樹と白川君って、いつから仲良いんだっけ?」
「んー。瑠美と同じぐらいの時期だから・・・小学生の頃じゃないかな。ね?」
「ああ。高坂も同じ小学校だったよな」
「うん。あんま学校に行ってなかったんだけどね」
「だよな。なんで休みがちだったんだ?」
「えっ、と・・・。ちょっと、ね・・・」
あたしが病気ってことは里樹しか知らない。
でも、この時あたしは知らなかったんだ。
彼の秘密を・・・。

「ふぅ。やっと終わったー!」
「今日は保健室行かずにすんだね」
「うんっ。よかったー」
あたしは里樹と教室を出る。
すると、いきなり後ろから背中を叩かれた。
「うわ!?」
「っ、何!?」
後ろを見たら、白川君がすごく笑ってた。
「お前ら、反応違いすぎんだろ!つーか、そんなにびっくりするか?」
「するし!なんでそんな笑われなきゃいけないのよ!」
「そうだよ、ホントにびっくりした」
「ははっ。でも、今の反応で性格出てたな〜」
どういうことだろう?
「木下は、男勝りで気が強い。んで高坂は、なんつーか・・・女っぽくておしとやか」
「うっさい。どーせ男っぽいわよ。瑠美が女の子っぽいのは納得するけど」