狼な彼と赤ずきん

「とりあえず……立てるか?お前、ひどい姿をしてるぞ。顔は真っ青だし、あちこち怪我してるし。これじゃあ歩けないだろう。ほら、おぶってやるから掴まりな」



「大丈夫よ……自分で歩けるから」



私は彼の手を借りてなんとか立ち上がり、一歩足を踏み出したが、すぐにバランスを崩して倒れそうになってしまう。


よろけた私を、彼は素早く抱きとめてくれた。



「俺の家へ行くぞ。食われたいのか死にたいのか何なのか知らないが、とにかく理由を聞かせろ。話はそれからだ」



私を抱きかかえたまま、彼は森の奥へ向かってゆっくりと歩きはじめる。



彼の手は相変わらず暖かい。



腕の中で心地よく揺られて、私はいつの間にか意識を手放していた。