日に焼けた肌に、灰色の耳と尻尾。


破れかけのオーバーオール。


十年の月日を経て精悍な顔立ちになり、よりがっしりとした体格に成長したようだったが、彼はまさしくあの時の狼だ。



直感で、そう分かった。



「やっぱり、赤ずきんだな。お前、どうしてこの森へ来たんだ?こんな、足も傷だらけで……」



心配そうな瞳が私を覗き込む。


でも、そんな気遣いはいらない。



「狼さん……お久しぶりね。残念だけれど、私はあなたとゆっくりお喋りしている暇はないの」



自分の声が、想像以上に弱々しくて驚いた。


ここ数日ほとんど栄養をとっていない状況で、長距離を一気に走ってきたからだろう。


しかし、そんなことはどうでもいい。


私はもうすぐ死ぬのだから。



「ねえ、狼さん」



引き寄せるように手を伸ばすと、彼は私の前に屈んで視線を合わせてくれた。


なぜだろう、彼の優しさに涙が零れそうになる。


私は涙を拭うように目を擦り、次の言葉をはっきりと告げた。


「私を、今すぐ食い殺して……」