あれから十年の月日が流れ、心地よく晴れた春の日の昼下がりのこと。


「はあ、はあ、はあっ……」


お気に入りの赤いフードを身につけ、私は街はずれの野原を全力で走り抜けて息を切らしていた。


向かっている場所は不浄の森。


その目的はただ一つ。狼に食い殺されるためだ。




事の発端は一週間前の出来事。


長らく病を患っていた祖母が、ついに亡くなってしまったのだ。


幼い頃に両親を事故で亡くした私にとって、祖母だけが唯一の支えだった。


その祖母をがいなくなったことで、私の日常は一気に崩壊した。


三日三晩泣き続け、ここ数日は食事もろくに喉を通らなかった。


何しろ、幼い頃から祖母の看病に明け暮れてきた私は学校に通うことがきなかったため親しい友達もおらず、祖母との生活が人生のすべてだったのだ。


これから何をしていけばわからないし、何をしたいのかもわからない。


そんなどん底の状況で、さらに追い打ちをかける人物がいた。