狼な彼と赤ずきん

最後まで残っていたのは狐だった。


「赤ずきんちゃん」


彼に呼び止められて、ごみを袋に詰めていた私ははっと振り向いた。


「みんな帰ってしまったし、そろそろ僕も行くよ。今日は素敵な会をありがとう」


「ううん、それは狼さんに」


「主役の君がいたからこそだよ。お礼は君に言わせておくれ」


「……どういたしまして」


以前祖母に教わったようにスカートの裾を軽く持ち上げてお辞儀をするが、彼にお礼を言われても、私の気持ちはどんよりと灰色に曇ったままだ。



お辞儀をした格好のままうつむいてしまった私を、狐が何か考えているような目で見つめてくる。



「赤ずきんちゃん。もし君が悩んでいることがあれば、いつでも僕の家へおいで。相談に乗ってあげよう」



まるで気持ちを見透かされているような言葉に、私は驚いて顔を上げた。