「あんたちょっと、音楽のボリューム大きいよ!ご近所さんの迷惑になるから音下げなさい。」
はーいと頬を膨らして返事をしたものの、いつもと同じ音量で、私にちょうどいいあの音量で聞いていたはずなのに注意を受けたことが、胸の端をチクチクとつついた。
結局私は音量を下げるのではなく電源を切った。
だって、下げたら聞こえなかったから。
この頃になると、私はひどい頭痛と耳鳴りに悩まされるようになった。
けれど元々頭痛と幻聴持ちだった私は、気にしないふりをして誰にもそれを言わなかった。
テレビで聞き取れないセリフが増えてもみんなに合わせて笑っていた。
友だちの話が聞き取れなかった時は、同じ言葉をもう一度頼むのではなく、意味を簡単にして説明してもらうように工夫していた。
自分の中に確かに起きている異変を認めまいと必死だったのだ。