そう。
邪魔というのは晃と由美カップルだ。


正直、救われた、って感じだけど。



…薫を見送る時に、未練はあったけど。



もう少し。



あと少し。




薫の香りを感じていたかった。



下手をすれば欲望に負けていたかも知れないけど、抱き締めていたかった。




電車が薫を連れさってから、何を思ったか晃が、


「やっとお前も男になったか~!!」


と言ってきた。



「俺は生まれた時から男だぞ?」



「そういうイミじゃ無くてさ。
初体験。
…したんだろ??」



顔が赤くなるのが分かった。



「お…おぅ。まぁな。
…初めて抱き締めた」




晃の顔が変な顔になる。



なんだ?



何か違ったのか?




「お前…。その初体験じゃねぇよ!!
…あの、なんだ、その。」




…!!!!!



そっちか!!



「ばっ、馬鹿、それはまだだよ!!」




「お前…何でそんなにストイックになれるんだ?
抱きたくねぇの??」



「だっ…。大事に。したい…から、薫ちゃんの気持ちを尊重?」



「薫ちゃんがまだイヤって言ってんのか?
じゃあしょうがねぇか~」





…イヤ、俺は誘いもかけてない。




自信が無いんだ。




もしかしたら薫を傷付けるかも、




と思うと





怖くて出来ない。





そんな俺の心境を察したのか、晃が口を開く。



「まぁ、それが全てでは無いし、幸せならいいんじゃね?」





…コイツは多分勘違いしてるけど、面倒くさいので勘違いしてもらっておく事にした。