お嬢様と執事の不器用なちょっとした話

「僕は単なる臆病者なんだ。纏の為とか言って結局は僕自身が傷付きたくなかっただけで。」



被った仮面が執事としてだけならば、自分自身を否定されないから。


偽りの感情で接していれば、何を言われても飲み込むことが出来た。



「婿探しの件だって嫌だった。纏の一番傍に居て纏のことを一番知ってるのは、他の使用人でなく旦那様でもなく、僕なんだから。」



金持ちというだけで後から掻っ攫って行かれるのは、何とも言えない嫉妬溢れる気持ちだった。



「でも、纏には幸せになって欲しいから。例え、僕じゃない誰かを選ぶ運命でも、それを見届けるのが僕の宿命でも。その時が来るまで、その時が来ても、その後も必ず纏の傍にいる。何があっても、それだけは僕の中では変わらない。」



いつだって纏の隣は自分が良い。


そこだけは譲りたくなくて悪あがきしてしまったけれど、隠した間違いを正すのは今しかないから。



秘めた恋する愛を言おう。



「僕も纏が好きだ。」


「い、おり………!」



はっきりした言葉とは真逆に涙に歪んだ表情。


それでも纏も庵も笑っていて。



静かに抱き締め合ったのは、愛しさが溢れたから。