お嬢様と執事の不器用なちょっとした話

「苦労って……。そんなものどんなにしたって、どんなに貧しくたって構わないわ!お嬢様というお飾りよりよっぽど良い。私は庵と歩んで行きたいの、私達なりの最高と言える人生を、私達だけの軌跡を。」



頑なな庵に纏は問いかけるように言って。



「私は、庵が好きだから!」



「…!!」



見つけたら

(見つけ出して)



追いかけて

(逃げないから)



捕まえて

(手を伸ばすから)



無くさない様に

(失いたくないから)



離さないで

(傍にいて)



建前を取り払って、本音を言えれば。



「お嬢様はお飾りなどではありません。私にとっては、旦那様より大切な人です。電話をしたのは、声が聞きたかったからです。会いに来たのは、顔が見たかったからです。例え仕事の用件でも全てお嬢様だからです。」



サプライズ誕生日会が毎年でも泣いたのは、分かっていても嬉しかったから。


意味を理解した家出に連れ戻せなくて怒ったのは、傍に居ないだけで心配するから。


纏が不意に見せる年相応の言動に笑ったのは、纏は纏だと安心したから。



庵の感情を左右するその全ては、他でもない纏が原因だった。