素直に返事をすると、椎原くんはもとの彼に戻った。
今日は4番さんに方向を教えてもらわないで言ってみせるよと意気込んで曲がるたびに「次はこっちでしょ?」と言いながら家までまた送って行ってくれた。
それと同時に椎原くんの弟の話も聞かせてくれて、昨日帰った後に些細な口げんかの話を聞いて思わず吹いてしまった。
そんなわたしに「ちょっとー!その時の俺は必死だったんだから」と一瞬目を細めたけど、最後にはまた二っと笑っていた。
「到着っ!今度は体調崩したら無理してこなくていいからね」
「いやだって言ったら?」
「またこうやってすぐに家まで引っ張って帰るよ」
それならまた行っちゃうかもと心の中で思ったけど、それは言葉にはしなかった。
送ってくれてありがとうと言うと、彼はまた明日ねと言った。
わたしはその言葉にコクンとうなずいて手を振って彼が見えなくなるまで見送ったんだ。