「なんで今日は手ぶらなの?かばんは?」
彼はわたしの近くをきょろきょろと見ながら、わたしと彼の間にあったかばんを外側に置いている。
「今日初めて学校休んじゃった。昨日の雨で体調崩して、朝アラームで起きてまた寝たらもう学校が終わってて……」
そう聞かれて、ははっと笑って誤魔化したわたしは正直に答えてしまった。
でも考えてみなくても、答えをミスったなって思う。
椎原くんはわたしの言葉を聞いていつもの笑顔がサっと風のように消えた。
「帰るよ。熱は?」
先に彼は自分で立ってから、わたしの腕を上にぐいっと引っ張った。
それに逆らえないまま、まだ座ったばっかりなのに立ち上がる。
熱…そういえばわたしは基本的に熱を測ってその数字をみて余計にだるくなりたくないから滅多に測らない。
それは今日だって同じ。
でもこの状況でそんな言い訳が通じるのだろうか。
……無理な気がする。