「やっと笑ったね。今のはちょっと盛りすぎたけど、泣くくらい自分のこと追い詰めないで4番さんはもっと笑った方がいいよ」



俺に負けないくらいねと言って椎原くんは二ッと歯を出して笑った。



彼は最後の一口になったパンをぽいっと口の中に放り込んだ。



「うん、ありがとう」



わたしも彼に返すように小さく笑った。



空を見上げると、太陽は昨日のように遠く前にある山に向かって沈みかけている。



カラスがそれぞれに鳴きながら列になって飛んで行く。



しばらくして椎原くんの「帰ろっか」の一言でわたしたちは立ち上がった。



そしてまた会えるか分からないのにさよならじゃなくて「またね」と言い合って土手を下りるとお互い別の方向へ歩いていった。