〜なにもなくなる前〜 僕の部屋は 白い壁、白い家具、ただ白を基調にしていた。 僕は白が好きだ。 白は穢れの無い唯一無二の色。 何色にも染まり、また何色にも染められない色。 そう考えていた。 だが一つだけ、 白い世界の中に薔薇が咲くようにある赤い椅子。 買った覚えはない。 そしてもらった覚えもない。 赤はそこまで好きではない。 だが、この白い世界の中に一つある赤い椅子を、 その空間をとても美しいものだと、 僕は確信にも近い納得を得た。 赤は白を映えさせ、白は赤を映えさせる。