…は?何言ってんの、この人。

ナンパになれてそうな、ただのチャラ男?

「お世辞どーも。トイレ行きたいで、じゃ。」

あたしは楠見という男の手を振り払って

そそくさと歩き出した。

「…ま、第一コンタクトは成功っしょ。」

そう言って楠見という男がニヤリと

顔を変えたのは、まだこの時は知らなかった。

* * *

放課後、あたしは学校に残って

勉強をしていた。完全下校の6時半を

時計の針が合図したから、あたしは

カバンを持って教室を出ると

同じく教室から出て歩く仁人を見つけた。

「あ、仁人!」

「桜良さん!勉強ですか?お疲れ座です。」

仁人は笑顔で駆け寄ってきた。

「仁人こそ、お疲れ。途中まで一緒に帰る?」

………ってあたし、何サラッと言ってんだ!?

「はい!もちろんです。」

って笑顔で言ってくれたから、安心したけど。

先例がないから分からないけど

あたしは多分、恋に奥手ではないタイプだな。

そんなこと思いながら、2人で門を出た。

* * *

「2年5組、横原仁人、アイツ使えるな。」