「あぁ…桜良さん、カバン忘れてたんで。

ないと困りますよね?」

そう言った仁人の肩には仁人のカバンと

あたしのカバンが持たれていた。

「…また、届けてもらっちゃったね。

ありがと…。」

あたしは仁人からカバンを受け取る。

「さっき、奈津たちに何もされなかった?」

幸い、顔に傷はないから暴力までは

いかなかったのは見てわかるけど…。

「大丈夫ですよ。僕があまりにも

怪しかったんで、不審に思ったんですよっ。

桜良さんは友達に思われてるんですね。」

そう言ってニコニコと笑う仁人に

やるせない気持ちが湧いてくる。

「あの…桜良さん、今朝の…」

忘れかけてた話題を出されあたしは

金縛りにあったような感じになった。

「…な、なに」