まだ1度しか話してないただ1人のせいで

ここまで悩むことなんてなかった。

「………あたしは、バカか。」

あたしの情けない声はまた静寂の中に消えた。

* * *

「よぅ!桜良ちゃん、おかえりぃ!」

「近藤さん、いらっしゃたんですね。」

お父さんの仲間(つまりヤクザ)の近藤さんが

ウチに遊びに来ていた。

見た感じからゴツくて、怖そうな感じ。

だけど、あたしは何も怖くない。

「桜良おかえり!今日は早いのか?」

「あ…お父さん。ただいま。」

「聞いたぞ。またあの隣の高校が

来たらしいじゃないか。1人対10人で桜良が

圧倒勝利だったんだって?さすが

父さんの子だなあ!ハッハッハッ!」

「マジっすか!さすが桜良ちゃんだなぁ〜」

お父さんと近藤さんはそう言うけど

ちっとも嬉しくない。

「…ありがとうございます。」

適当に返事をして、2階の自室へ向かった。