夏。熱気の籠った美術室の中で、サッサと筆を進める。
描きたいものなど浮かぶ事もなく、無理矢理筆を動かして行く。
これが私の日常。
今日も、平凡な一日。


「白山さん、この間のコンクールに出した絵なんだけど、残念ながら賞を逃しちゃったみたい…。」

「…そうですか。」

自分の絵が賞に入らないのはいつもの事。悔しいって気持ちはそんなにない。
でも、今回のコンクールに出した絵は結構がんばった方。自分なりに表現の仕方を考えて描いた絵。
でも…それでも賞には入らなかった。
それは、私に絵の才能が無いってことを痛感させる。

「えーっ、野々花の絵また落ちちゃったの?でも大丈夫!野々花は才能あるんだし、次は賞取れるよ!がんばれ!!」


友達のアミはそう言ってくれるけど、何回も何回も賞に落ちて、恵まれなんかしない。
アミ、私才能なんてこれっぽっちも無いんだよ。

『がんばれ』って言葉を言われるたびに、それに応えられない自分の無能さを感じてしまう。

それでも私はその息苦しさを隠して、笑ってこう言う。


「うん、ありがとう!次も頑張るね」

って。