竜宮城に帰りたい。




開幕のベルとともに、体育館の舞台の幕が上がった。


「"昔々、あるところに浦島太郎という若者が住んでいました~。"」



降り注ぐ照明のもと、観客席が一望できた。


あんな風に啖呵は切ったけど、

多くのお客さんを目の前にすると、

やはり緊張がじわじわと脳に伝わってきた。



「あれ、主人公早月じゃないね?」

「あの子誰だっけ?」



早月が浦島太郎を演っていないことに気付いた観客が

そうヒソヒソと話すのが聞こえた。



台詞…言わなきゃ!



「っ……」



ヤバい、一言目…

なんだっけ…



袖のクラスメイトたちがごくりと唾を飲む様子が伝わってきた。



このままじゃ、早月やみんなとの約束が……!!








「ブスや。」






ハッ…!!


今の声……




絶対!ぜーったい晴だぁーー!!!



「え、ひどくない?」

「今の誰…?」



他の観客のそんなヒソヒソ声も耳に入った。