「何しょんや」
「来ないで!」
私がどれだけ必死に言っても、
晴は歩くスピードを変えない。
きっと私がこれ以上深いところまで行かないと思ってるんだろう。
そんな半端な気持ちで海に入ったりしない。
私は晴が近づくたびに、深いところへ後ずさりした。
腰より深い位置まで水が来た頃、
ようやく晴が止まった。
「もうええ。
分かったけん、こっちゃ来。」
「……」
晴が後ずさりするから、私もゆっくりと島の方へ戻ろうとする。
しかしその時、突然大波が私を海の中に飲んだ。
息、できない…。
塩水が鼻と目を痛める。
ああでも、このまま波に飲まれて
乙姫に会いに行くのも悪くないな…
「…お…」
「み…ぉ…」
水の中なのに、
なにか聞こえ……
「澪!!」
ハッと目を覚ますと、目の前には不機嫌そうな晴の顔があった。