3日後私は学校に行った。
夏休みの補習。

こんなにも楽しみにしていた夏休みの補習は辛いものになった。

私は新しい自転車を買ってもらって一人で登校するようになった。

夏休みの補習を通じて美沙先輩とはもっと仲良くなった。

相変わらず先輩との距離は1ミリも縮まらないまま。

私はその縮まらない距離を持ったまま
美沙先輩とよく行動をしている秀先輩と仲良くなった。

美沙先輩の周りの人はみんな顔が整った人ばかりで
いまいちちゃんと顔を直視して話せない。

「こっち!!」

美沙先輩は私のことを呼ぶ。

すっかり私は美沙先輩と驚くほど仲良くなって
いまは美沙先輩のことをお姉ちゃん。

秀先輩のことをお兄ちゃんって呼ぶようになった。

それでも授業中みかちんの隣にいる
日向先輩のことが気になってちらちら後ろを振り向いてしまう。

プリント回す時いつも左を向いてたのが右を向いて回したり。

わざと手を上げて発表して目立つようなことをしてみたり。

教卓前黒板に答えを毎回書きに行くときわかっていた。

先輩とみかちんの視線が思いっきり私のことを貫いてることなんて。

お昼休み私たちは大人数で机をくっつけてお昼を食べることになった。

「なぁ澪ちゃん?」

「おねえちゃんなにぃ?」

「さっき秀と話しててんけどな」

「うん」

「澪ちゃんってあんまり手を上げてまでも発表するような子じゃないよな?」

先輩の鋭い観察眼。

「そんなことないですよ」

「あると思うでぇ?」

おにいちゃんは意地悪そうな顔をして言う。

「なんでですか?」

「文字が震えてるし、まず足が震えてる」

隠しきれなかった。
日向先輩がいまどんな目で私のことを見るのか
もしかしたらもう見てくれないんじゃないかって思って
試すためにそんな行動をとってたこと。

「日向のこと好きやろ?」

…答えられない。

「ほらこれ渡しておいで」

美沙先輩に渡された2つのいちごみるく。
私は気まずくて。

先輩の前に行きたくなくて。
どうしていいかわかんなくて。

「好きなら行っておおいでよ」

秀先輩のその言葉に私の中に光が落ちて

「うん…」」

私は歩き出していた。
いちごみるくに

「どうぞ、私からじゃないので。」

と一言書き添えてまだ足は震えたまま

「澪…」
先輩は相変わらず澪って呼ぶ。
卑怯だ。卑怯だ。そして悪魔だ。

そんな名前で呼ぶなよ…。

まだ許せない私の心はそう叫んでいた。

「これ私に来ただけなので、あと解除したので」

そう言い残してみかちんとは普通におしゃべりをして。
みかちんに明日一緒にお弁当を食べる約束をして帰って行こうとした。

みかちんの隣を通り過ぎたとき私の頬をまた涙が伝う。

「おかえり妹ちゃん」

お兄ちゃんとお姉ちゃんはそういって私を抱きしめてくれた。

きっとこの泣き崩れてしまった私も
いま先輩に見られているだろうけどやっぱり苦しかったです。

ほかの女の子と一緒にいる先輩を見ることが。
私が1番近くにいたいのに。いれへんのに。

私の知らない先輩の時間をこの夏休みの時間を違う子が埋めていくことが
怖くって。

ずっと泣いてるなんて言えやしない。

翌日私はお昼休みみかちんといちごみるくを2人で飲んでた。

今日のいちごミルクはみかちんの奢り。

「ねぇ澪ちゃん」

「ん?」

「最近先輩となにかあったの?」

…。

「ちょっと喧嘩しちゃってさぁていうか別に好きな人ができた」

「え??」

みかちんは私の嘘に動揺する。
嫌いじゃない。

でもいまはまだ信じられない。

それだけ。

でも私の負った傷分だけ先輩も負ってしまえばいいって思う。

「あのね澪ちゃん」

「ん?」

「澪ちゃんに前さぱふぇのおいしいカフェ教えたやん?」

「うん」

「あそこでね先輩とデートすることになったの!」

嬉しそうなみかちん。

「そぉなんやよかったやん!!」

ほらまた傷が増えた。

「でね!」!」

私に何かを言おうとしてどこかを見つめたままみかちんは立ち止まった。

「みかちん?」
私はみかちんの足元に座って話を聞いていた。
私は壁からこっそりとみかちんの視線のほうを向いた。

そこにはきょろきょろしてる先輩がいた。

「ごめん。これ捨てておいて」

みかちんは飲み干したいちごミルクのパックを私に渡すと
先輩のほうへかけて行った。

先輩と同じ目線で話すみかちんはいつもよりキラキラしていて
かわいくて乙女で私は見ていられなくて
吐きそうになりながらも飲み干して立ち上がって私はゴミ箱に捨てに行った。

「澪ちゃん!!」

私に手招きをして私のことを呼ぶ。

私は歩いてみかちんのほうへ行く。

「ん?」

「じゃぁ先輩また夜電話しますね」

みかちんはそのままどこかへ消えた。
先輩の目見れない私。

「ついてきて」

私は何もしないで頷きもしないで先輩の後ろについていった。

屋上…。
私はまた心が痛むのが分かった。

先輩は扉を開けた。
その先には秀先輩とか私の知らない先輩もたくさんいた。

もちろん美沙先輩も

「おねぇちゃん」

私は美沙先輩のほうへ走って行って抱き着いた。
先輩はまたいつものように私のことを大事に大事に撫でてくれる。

「話があるねん」

先輩の気まずそうな顔。

私は警戒心マックスで先輩に向き合った。

「なんですか

声の低さは機嫌の悪さを表す。

「この間のことは本当にごめん。まだこの間のことは話せないんだけど」

「離さなくていいです傷が増えるだけなので」

先輩の話す言葉をさえぎってそういう。

「明日の…お祭りさ…俺の隣歩いてくれませんか」

……。


俺の隣…それが私は何が意味するのかよく分かった。

夏の「お似合いサマー」のコンテストの話。
毎回いろんな人が出場してるけど先輩の優勝を破った人はまだいない。

「みかちんでいいやないですか」

「…」

「みかちんは私よりも綺麗やし」

「俺は!俺は澪がいいんや」

え?すごい耳を貫くような黄色い悲鳴。

「それって…」

「詳しいことは明日話すから。ここのみんなが協力してくれるから
なんも心配いらん。俺の隣歩いてほしんや。
澪がいいって言うなら明9時に3年A組にきてほしい。」

先輩の気持ちを聞いて私はまた崩れだした。
私は先輩のネクタイを引っ張って顔を近づけた

「…喜んでお答えさせていただきます」

そういって軽くおでこにでこピン。
これが私たちの仲直りの仕方だった。