ふとちらって右を見た。

大型トラックがとてもとてもいつも見てる以上に大きく見えた。
あれ?こんなにトラックって大きかったけな?
何自分寝ぼけてるんだろうそんなわけないじゃん。

トラックは私のほうに向かってきてるんだよ。
そんなことを思いながら。

頭の中がいつもよりもいっぱいいっぱいいま溢れだしそうなほど
日向先輩のことで埋め尽くされる。

先輩…

笑った先輩

疲れた表情の先輩

真剣なまなざしの先輩

無邪気な笑顔の先輩

何か食べてる時はなんか真剣な先輩

幸せそうに寝る先輩。

あれ?
あ、そういえば1つだけ先輩の知らない顔がある。

どんな先輩の表情だって知ってるのに酷く傷ついた表情を私は知らない。

泣いてる先輩も知ってるのに。

ひどく傷ついて泣きじゃくったそんなかお私見たことないな。
そんなことを考えてる間に鈍い音とともに
いままで感じたことのないような痛みをからだ全体に覚えた。

私の体は宙に舞っていく。

私の愛用していた自転車は向うへ飛ばされてまた違う車にあたって無残な姿に変形した。

先輩にもらったクマのマスコットキーホルダーのついたカバンも踏まれてクマもクマじゃなくなった。

そんな光景とトラックのお兄さんの恐ろしさに染まった表情を私は見ていた。

そして変な感覚に襲われた。
聞こえる蝉の声。

いろんな風景と季節が来ては過ぎ去っていく。

思い出がまわる。

現実はとてもスローモーションになる。

きっとこれが走馬灯ってやつ。

1秒はいつも刹那的だけど1秒が1分ほどに感じられる。

「先輩」

こんな時ですら先輩のことで頭の中が埋め尽くされる記憶はだんだんと遡っていく。

その中でも何かの熱さと痛み、はっきりと遠のいていく意識の感覚。

怖いって一瞬思った恐怖心も消える。

「大丈夫?」

ほら、あの忘れられないあの日まで。

まだ生きたい。

まだ…。

きっと今日寝過ごしていなかったらこんなことにならなかった

こんなにつらいほどの後悔もしなかった

こんな痛みを知ることですらなかった。

きっと今日も先輩と他愛もない話をしながら
先輩のことを1番近くで見ながら感じながら一緒に登校できたのかもしれない

こんなに辛い初恋をするくらいなら
はじめから日向先輩のことなんて好きになってなかったのかもしれない。

バレンタインの日にでもいやタイミングは転がってたのかもしれないけど
私がつかめなかっただけだ。見つけられなかっただけだ。

もっと早く日向先輩の告白していたのかもしれない。

もし本当に神様がいるのなら
今日こうやって私に起こることはわかっていたのかもしれない。

神様は何て残酷なお方なのだ。

私はそんなことを思いながら静かに目を閉じた。

先輩のことをこの胸に強く思いながら。