「あー、やっと今日で夏休みかぁ…」

7月末日―――…

高校まででいう1学期の授業をすべて終え、彼の心は晴れ晴れとしていた。

なにしろ、大学生になってから初めての夏休み。

なかなか慣れない大学の環境から解放されることもあってか、彼の安心感は、受験が終わった時の何倍も心の中にあった。
「さーてと…この夏休み、どう過ごそっかなぁ。まっ、今日はとりあえず、のんびりするとするか」

そう言いつつ、ベッドに寝転んだ時―――…

ガチャッ

「兄ちゃーん」

電話の子機を持った弟が、彼の部屋に入ってきた。

「んあ?」

「電話だぜ」

「ああ、さんきゅ」

上半身を起こし、受話器を受け取る。

「もしもし―――…」

――そう、この電話がすべての始まりだった。