「大丈夫ですか??」


「………えっ…」


声に見上げると、背の高い男性らしいシルエットが見えた。
外から差し込む光の逆光で顔がよく見えない。


優しい、穏やかな声。
なんとなく聞き覚えがあった。


「………椰原、さん??」


「………神崎…さん???」


自転車屋の常連様だ。
ロードバイクに乗っていて、いつもスポーツタイプのウェア姿なので、すぐにわからなかった。


短めの黒髪を無造作にセットした、色白ですっきりと目鼻立ちの整った。線の細い白衣の似合うイケメンだ。


「……ここの方だったんですね」


「どうしたんです??こんなところで……泣いてるんですか??」


心配そうに覗き込もうとしたけれど、慌てて顔を背けた。


見られたくない人物に見られてしまった。涙を拭うと、立ち上がろうとしてふらついた。


「おっと…」


庇って支えられるけれど、そのまま、ふわりと抱き締められた。


「…なに、してんですか、俺の嫁に」