「奥様とすら至らなかったって言ったじゃないですか!!嘘つき!!…もう、信じられない。……別れてください!!もう、もう構わないで!!」


「だから!!違うんだ……って……っ」


「さよなら」


止めようとする腕を振り切ると、ドアを開けて飛び出して乱暴に閉めると走って逃げた。


もう無理だ。
やっぱり。


あんな男。
あんな――――。


「……どうしてよ」


走りながら、涙が止まらなかった。駐車場から出る非常階段残り数段で、踏み外して靴が脱げ、そのままうずくまって泣いた。


「……なにやってんだろう、私」