***


病院の駐車場で車の中にふたり。


ぼんやりしていた。
私は彼のなんだろう。


診察が終わって結果を言われて。お薬を処方されて。なにも耳に入らない。ただ背景が映像が、無音で流れていく。


そして。
彼は私のなんだ。今さらだけど。そんなにショックなことなのか?


そもそも私は、彼を好きなのか?
嫌いだったはず。
大嫌いだったはず。


―――それなのに。


ふと我に返ると、助手席に座った先生の顔が目の前にあった。


涙が頬を伝っていた。
それを指で拭うと、唇が触れた。
とてもとても優しく。


こんな優しい先生は初めてだ。


「…………別れて、……ください」


ついに言葉を絞り出した。
先生は、一瞬驚いた目をして、


「!!………っ、…………嫌……だ」


嫌な予感はしていたようだけれど、いざ改めて言葉にされると、飲み込むことを拒んでいたようだ。


やはり言葉を絞り出す。