言って女性は先生の腕に絡み付いた。


「おい、やめ…」


少し慌てたように腕を離そうとする先生。


何だろう。
少し前まで当たり前のように見ていた光景が、目に刺さった。


―――痛い。


「あのっ、商品下ろしたら、すぐ帰りますね」


「果奈さん…??」


「かな……??」


布勢くんが発した言葉に反応する女性。


「……まさか、この子なの!?こんな小娘に」


するりと絡ませた腕を放し、つかつかと近付くと、私の頬を力任せに平手打ちした。


パン!!


と、閑静な住宅街に音が響く。


「こんな小娘に負けたの!?私は!!」


声を震わせる。


「……勝手に離婚届だけ置いて行方知れずになって。まだ出してないから、成立はしてないけどね」


「……何で出してないんだよ!?」


「あなたの思い通りにはならないっていうことよ」