「ああ、お疲れさま。荷物を支店に頼んでて」


何も知らない、気付いていない店長が倉庫から出てきた。


「あれ??どうかした??」


おかしな空気にきょとんとする。
大蔵さんも遠巻きにおろおろする。


「婚約者の果奈さんのお店で買おうかと、自転車を見に来ました」


『婚約者』という言葉をやたら強調して、背後から羽交い締めにしたまま爽やかな笑顔で。


「おお、椰原さん!!それはおめでとう!!」


店長が思わず拍手する。


「違いますからっ!!」


ようやく絡み付いた腕をほどくと高居先生をキッと睨み付けた。


「ただの幼馴染みです!!」


「照れているだけですよ、昔からこうなんです」


にっこりと微笑む。
こいつはっ!!


「…そんなに…」


「そんなに前から知り合いなんですか!?ロマンチック!!」


布勢くんが力なく言い掛けた言葉も菜々子さんに被せられる。


あまりのショックに言葉が出てこない布勢くん。


「違うのこれは…」


布勢くんに説明しようとするけれど、高居先生に腕を掴まれる。


「離してください!!」