「顔が、いや顔色が優れませんよ??」


至近距離に突然現れたドクベ先生。いや、高居先生。


カーキグリーンのロングのニットカーディガンにデニム姿だ。薄手の長袖セーターから厚い胸板が強調されている。


「ひいい!!」


また、ずざざっと後ずさって、接客中だった大蔵さんにぶつかった。


「どうした!?椰原さん」


「え"っ!?いえ!!なんでもっ!!」


目の前の事態に、パニクる私。


お爺ちゃんは、入院する手続きが終わって落ち着いたから、昨日、こっちに帰ってきて。


帰ってきて。
で、出勤して。


で。なんでこいつが。
こいつがここに。今ここに!?


「お客様は神様ですよ!?学校で教わりませんでしたか??」


にっこりと微笑むその顔は、はたから見れば素晴らしく整ったイケメンで、女子が放っておくはずもない容姿だ。


私は違うけど。
違うけど。
言い聞かせるように否定しつつもドキドキするのはなぜか。
―――悔しい。


「そんな教育は受けてません!!」


必死で抵抗して、泡を食ってその場を逃れようとしたけど、腕を掴まれてしまった。


「ではこれから教えて差し上げましょう。逃がしませんよ??」


「椰原さん、知り合い!?超イケメン!!!!!」


奥で家族連れの接客が終わった菜々子さんがお客さんを送り際に食い付き見惚れる。


「知りませんこんな人っ!!」