「携帯にかけても繋がらないから」


お母さんが膨れる。


「仕方ないじゃん、仕事中なんだから」


―――夜。


店に掛かって呼び出されたのは、お祖父ちゃんが倒れたという電話だった。


何ごとかと、慌ててふたつ隣の県のお祖父ちゃんが住む田舎へ飛んできた私。


本当に畑と山しかない、日が暮れると明かりがほぼない。
外灯もない。


民家がポツポツあるくらいだ。


自転車屋を父に引き継いだ後は、お祖母ちゃんの実家であるこの町に隠居していた。


「病院は行かなくていいの??」


入院するとなると大ごとだ。
お祖母ちゃんが腰を擦ってあげながら、


「前からだけどね、腰を痛めただけだから。明日主治医の先生が診てくれた結果次第でそうなるかもね」


私が着いた頃には引き上げたらしい。


「ちゃんと診てもらった方がいいよ」