「俺に会いに来てくれたのか??」


「違いますよっ」


笑いながらそう言って抱きついてじゃれあう。


そうそう、もうひとりの社員の大蔵(オオクラ)さん。


肩幅の広い、こちらも何となく熊みたいな、パンダみたいな。


刈り上げた髪の上の部分にパーマをかけた、40手前のよきパパだ。


「二人目が産まれるから実家に帰ってるんだ、寂しいぞ」


言って頬擦りする。


「菜々子もっ」


どさくさで抱き付こうとする菜々子さん。


「こらこら、セクハラですよ」


大蔵さんに咎められて拗ねる菜々子さん。


「ズル~い!!大蔵さんこそパワハラモラハラですよ」


何にでもハラを付けるな。覚えたての言いたがり。


ズルいのはあんただ。
思いつつ、ほのぼのとした光景を遠目に見つめる。


ああ、仲間に入りたい。
いやまて。


私は何を考えてる。


「果奈さん、メール見てもらえました??」


ふと近付いてきた布勢くんに聞かれる。


「ななな、なにを???」


だから、
動揺しすぎだってば。