事故に遭ってから文句を言う。
見ずに飛び出しておいて。


挨拶も同じで。


すればいいというものでもない。
そこに感情がなければ、口先だけで済ませても意味はない。


―――口先だけか。


ふと、高居先生の言葉が浮かんだ。


「2年以内に相手がいなかったら、結婚してやろうか」


冗談だよな、
きっと。
いや、絶対。


というか、どこに消えた。


「いらっしゃいませ」


お客さんが来た。
若い男性だ。


「隣市の支店で買ったんですけど、見てもらえますか??」


「はいっ!!もちろんです!!」


隣市の支店、


―――布勢くん、元気かな。


「お疲れ様です」


「ふ、布勢くん…」


思い出したそばから、本人だ。
持っていたベルを落として足の上をバウンドした。


チャリンと音がしてビクッとなる。
動揺しすぎだ。


「お休みなんで来ちゃいました」


いつのまにか裏に布勢くんのロードバイクがあった。


何だかんだでひと月振りくらいだ。久しぶり見た私服が眩しい。


微かに汗ばんでいる。