それなのに、 見てしまった。 その夜。 原付でいつもの道を帰宅途中。 何気なく信号待ちで横に視線をやった先に。 ファミレスの出入り口の脇、薄明かりの中で抱き合うカップルを。 女子大学生アルバイトの、守山さんだ。 うな垂れて胸に顔を埋める彼女の肩を抱いて、頭を撫でていた。 「…やっぱりそうなるんじゃない…」 ヘルメットを目深に被り直した。 なんだか胸が、ちくりとした。